2025.03.18 火曜日 晴

雑記

「泡の子」 樋口六華 2007年生まれ 2024年本作品ですばる文学賞受賞

2007年生まれで2024年受賞ということは16歳から17歳にかけてこの作品を書き上げたということだろうか。それにしては達観しているというか諦観しているというか作品中に16,17歳とは思えない程大人びた雰囲気がある。舞台はトー横の呼び名で有名になった新宿歌舞伎町の一角。トー横キッズと呼ばれる若者が集まり駄弁り薬をやり売春をしたりで風紀が乱れ、何故かメディアに取り上げられ都知事がこの一角を歩き視察する姿が流された。メディアに取り上げられたことで全国的に知られるようになり地方からもここに来る若者が見られるようになる。警察による一斉補導したとき東京出身より地方からの上京してきた子が多かったようだ。そして全国に散らばる主要都市にもこのような若者が集まる場所ができてくることになる。多分それまで個々で家出したむろしていた子供がある場所に集まるようになったことによると思う。

 このトー横キッズが放送され始めたころ、私が思ったことはいくら若者が集まっていると言っても2桁の数でこの世代が全国にいる数に比べれば川にスポイトで水を差したくらいではないだろうか。なのになぜさもこの世代がの多くが歌舞伎町に集まり犯罪をしかねないと思えない放送をするのだろうと思ったことだ。ほとんどの若者は家出もせず、薬も使わず、犯罪もしない。極端な枝葉を強調し取り上げることで大部分の若者が直面している悩みや困りごとが薄れて置いて行かれているのではないかと。トー横に集まる若者だけが崖っぷちにいるのではない。自分のいる場所で必死に耐えている若者の方が多い。トー横キッズはドラマチックで悲壮で刺激的で小説やドラマの種になりやすい。ほとんどの人の人生は平凡で起伏が少なく淡々と時を刻んでいく。そして、トー横キッズのように騒がれることもなく、何かに取り上げられることもなく、自分に課せられた運命を歩いていく。しかも、決して全員がトー横キッズより恵まれているというわけではない。トー横キッズはその目立つ行動により大人の耳目を集め、大人しい殆どの若者は大人にはあまり顧みられず知られないうちに子供から大人になっていく。

 たしかにトー横キッズには助けが必要だと思う。犯罪に巻き込まれる可能性も高いし、犯罪者になる可能性もある。しかし、メディアのセンセーショナルな取り上げ方には鼻白んでしまう。

 この小説は時を外さずトー横キッズと同じ年代の作者により書かれたことにより注目を集めた。すばる文学賞自体が若い人を対象としているのだろう。中身は主人公の退廃的な生活や現在社会で騒がれているパパ活、OD、売春など刺激的な事が散りばめられている。しかし、主人公の友人や恋人が歌舞伎町に堕ちてきた経緯はわかるが本人がトー横にたどりついた理由が弱くてよくわからない。回りとうまくいかない、アルバイト先で悪口をいわれた、でも家族は良さそうだ。もし、この小説の中の事がすこしでも作者の経験に基づくことがあるならば、まだ、文字に起こすには気持ちの整理がつかないことを抱えているのかもしれない。

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